NEBULA STORIESは、その語形が複数形をとっていることから推察できるように、いくつもの物語に冠せられる、総称的なタイトルと言える。
そもそも、これらの物語は、まずストーリーが考えられるのではなく、ある特定の世界観に沿って、自然発生的に物語が形成されてくるように、私には感じられる。
この世界観の規範になっているものが、N.M.Sである。
N.M.S は、Nebula Multi Stories を省略したもので、ひとつのオンラインマルチプレイヤーゲームとして、私の頭の中で稼動している。この
N.M.S には、歴史的流れ、空間的な意味、物語の視点などといった、複数の角度の異なる次元があり、それらは、別個に存在するのではなく、時に重なり、時に交わり、様々に変化を繰り返す。私は、その時々において、その交点にアクセスし、そこでたゆたう物語の雫を一つ一つ取り出し、紡いで、時には破棄し、外側に伝えられる形に再構築しているだけである、とも言える。
外伝1『新米探究者の話』で語られた物語は、N.M.Sの中では、歴史的には、おそらく現代であり、視点としては、ゲームのキャラクターとゲームのプレイヤーの中間点から眺めている。主な舞台となるのは、特定の惑星上ではなく、その惑星そのものが存在する、特定の星系ということになっている。そして、N.M.Sと相似形をもつゲームシステムが、そのまま、物語の中に登場する。それが
Nebula System と呼ばれるものである。
Nebula System は N.M.S そのものが、その世界の中に自身を転写して説明されたもの、と言うことも出来る。結果、外伝1の世界観は、Nebula
Systemの内と外にまたがることになる。そして、転写されたNebula Systemによって、本来の N.M.S
の歴史が、もう一度トレースされている。なぜならば、ラヴァク海賊衆が台頭した400-500年前の世界がNebula Systemの中に出現しているからである。
これに対して、現在のところ未完であるエピソード1『長距離輸送業者と女泥棒の話(仮称)』では、N.M.S の中のキャラクター視点で語られる、特定の惑星を舞台とした物語であり、時代としては、現代である。ただし、これが、外伝のように、Nebula
System の内と外にまたがるものなのか、どうか、現段階では、私にもわからない。この物語を紹介するには、私自身がもっと
N.M.S にアクセスし、必要であれば、パッチを当てて修正を加え、その世界でキャラクターに扮して、もっとプレイを楽しまなくてはならないだろう。
また、未発表の物語として、エピソードゼロ「宇宙一の悪党の話」がすでに存在している。これは、N.M.S の中に存在し得る悪漢小説的物語を読みたいと私が思ったときに生まれたものである。時代的には、外伝1の中に登場する
Nebula System のさらに中の世界、400-500年前のラヴァク海賊衆が居た時代であり、視点的にはエピソード1と同じ、キャラクター視点で語られている。機会があれば、お見せできる日が来るだろうと思う。
これ以外にも、私には、まだまだ N.M.S の中に眠る物語で、気になるものがある。歴史的には、伝承時代とされるネウインバーグやビューダン、そして真のラヴァクの物語も気になるところであるし、また、擬人化プログラムや、スタイルヘルガー・メカニカルリボルバーなどに代表される、魂なきものの物語も気になっている。しかし、これらは、現在のところ、気になっている、という以上のものではない。
繰り返し述べるが、これらすべての規範が、N.M.S であり、マルチストーリーと名付けた由来である。このような仕組みが本当に存在するのであれば、恐らく私というフィルターを介さずに、直接いろいろな人に、その数だけの物語を提供できるのであろうが、残念ながら、目下のところ
N.M.S は私の頭の中にだけあり、私だけがアクセス可能な状態である。しかしながら、かつて、N.M.S そのものを外部に出す努力をした痕跡が、ここにある。関心のある方は、参照されると良いかもしれない。そうすれば、少なくとも、そこにネウインバーグやビューダン、ラヴァクやヴォッサに関する記述の断片を見ることができるだろうし、ユニオンや、ユニオン・インターエクスチェンジ網の前身と思える記述を発見したり、また、今後顕在化するであろう物事の繋がりを推測することができるかもしれない。ただし、そこで扱われている空間的レイヤーは星系を主体とした、ごく一部のものでしかないことにも留意していただきたい。
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