むかしむかし、ガルダザーラという海賊がいました。
ガルダザーラは百人の手下と十艘の船を従える海賊の頭でした。
ある日、ガルダザーラとその一味は、三隻の商人の船を捕まえました。
捕まった最初の商人はいいました。
「私を殺して船はあきらめるか、船を奪って私を解き放つか、選ぶが良い。」
ガルダザーラはいいました。
「船を奪って、お前を解き放とう。」
ガルダザーラはそういうと、その商人を生きたまま宇宙に放り出しました。
それから、ガルダザーラは二番目の商人の船へと行きました。
捕まった二番目の商人はいいました。
「私を殺して積荷を奪えば、永遠に呪われるだろう。」
ガルダザーラは言いました。
「お前を殺して積荷を奪おう。お前が呪わないように、細かく切り刻んでしまおう。」
ガルダザーラはそう言うと、その商人を細かく切り刻みました。
それから、ガルダザーラは最後の商人の船へと行きました。
捕まった最後の商人はいいました。
「何を言っても私を殺すのだろう。私の家族はさびしがるだろう。」
ガルダザーラは言いました。
「何を言おうがお前を殺そう。だが家族がいつでも会えるよう、お前の皮を送り届けよう。」
ガルダザーラはそう言うと、商人の皮を剥ぎました。
首尾よく獲物をしとめた帰り道、ガルダザーラとその一味は海賊海流へとさしかかりました。海賊海流の底に、ガルダザーラとその一味をじっとみている二つの眼がついた大きな両手がありました。
手は五艘づつ船をつかんで、海流の底へと引きずりこみました。
ガルダザーラ達が気がつくと、そこは三角の形をした、大きな石を何千個も積み上げてつくられた、まるで大昔の遺跡のようにも見える古い古いお城でした。ガルダザーラ達は、宝があるかもしれないと言って、そのお城の中へと入っていきました。
ガルダザーラ達がお城に入ると、その門が閉じられてしまいました。そして、目に見えない鬼が現れて十人の手下を斬り殺しました。ガルダザーラと残りの手下は城の奥へと逃げました。
すると、さっき殺されたはずの手下が現れて、あと十人の手下を斬り殺しました。ガルダザーラと残りの手下は、さらに城の奥へと逃げました。
するとまた、さっき殺されたはずの二十人の手下が現れて、あと二十人の手下を斬り殺しました。それから、四十人の死んだ手下が同じ数の手下を殺し、さらに八十人の死んだ手下が残った二十人の手下を殺しました。
こうして、城の一番奥へと逃げた時、残っているのは、もうガルダザーラただ一人しかいませんでした。
城の一番奥は、壁や柱に読めない文字がびっしりと刻まれた『言葉の大広間』でした。
左の壁が呪いの言葉を言いました。
すると、死んだはずの百人の手下が現れて、ガルダザーラを押さえつけました。
右の壁が呪いの言葉を言いました。
すると、さっき最後に殺した商人が現れて、ガルダザーラに言いました。
「お前は私を殺したが、私はお前を殺さない。そのかわり、その皮を剥ごう。」
そういうと、最後に殺された商人は、ガルダザーラの皮を剥ぎました。
手前の壁が呪いの言葉を言いました。
すると、さっき二番目に殺された商人が現れて、ガルダザーラに言いました。
「お前は私を殺したが、私はお前を殺さない。そのかわり、その肉と骨を切り刻もう。」
そういうと、二番目の商人はガルダザーラを細かく切り刻みました。
奥の壁が呪いの言葉を言いました。
すると、さっき最初に殺された商人が現れて、ガルダザーラに言いました。
「お前は私を殺したが、私はお前を殺さない。そのかわり、お前を解き放ちもしない。」
そういうと、最初の商人は、ガルダザーラの魂がどこへもいけないように、そこにしっかりとつなぎとめてしまいました。
ガルダザーラは肉も骨も皮も失い、永遠にその城につなぎとめられました。しかしガルダザーラの魂がその城を引きずると、城はずるずると動くのでした。
こうして海賊城は、今も海賊海流をさまよっているのでした。
そして、眼のついた手は、今もときどき船を引きずり込むのでした.
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